備長炭のちクビレの修理

備長炭ナット・サドル出来た。できるもんだなぁ。ラウドになった。輪郭が出てなかなか良い。材はキンキンしているけれどガットの音自体は金属的な感じもしないしなかなかだ。ただ、すぐに欠けるもろさが気になるのと、材の切り出しの大変さ、ナット用のヤスリの切れ味が落ちるように思えるのとで気は進まない。

次は美しいギルドの12弦。こちらはくびれ部分のバインディング剥がれ。

先日娘の瞼が腫れて病院へ行った際に先生から言われたこと。「風邪の症状は?鼻が出てるだけね。で、呼吸が苦しかったり寝られなかったりは?ないのね。じゃあいい。治療の判断基準は支障があるかどうかだから。本人が困ってないならそれはそのままでいい。」

これがハッとした。そうなんだなと。間違ってなかったなと。ギターの修理も基本的には同じ。例えば「フレットが減ってきているんで交換できますか?」なんて聞かれることがよくあるけれど、演奏に支障がない、ビビってない、なら交換しない。そりゃ受ければ25000円くらいの仕事になるんだけれど。俺は美容整形外科ではないんだな。

このバインディング剥がれはなかなか厄介でバインディングがだいぶ縮んで締め込んでも付ききらない。ネックの所まで剥がしてずらすことで直すなんて方法もあるだろうけれど、裏ならまだしも表なので指板の下から引き出すことはおそらくできない。しかもギターが美しいので、新たに剥がすことで塗装が割れたりして余計に汚くなるリスクがある。じゃぁ切断するという方法はというと、パーフリングまではがれているので斜めに切ってつなぐと線に断層ができる。そもそも切るのは容易ではなく、気をつけてもそれこそひどい傷が入るリスクがある。全部剥がして巻きなおすってぐらい綺麗にやりたいならブリッジも剥がして全塗装やり直しだ。やりたくない。このままでは引っ掛かって扱いにくいからくっつけはするけれど、ギターとして支障の無いよう、パッと見てカッコ悪くないようになればいい。そういうわけでパーフリングと木の間に隙間ができようがこのままくっつけるという方法を取ることにする。サイドでバインディングが出っ張るだろうけど、ちょっと削ってサッとタッチアップで済ませようと思う。それが完ぺきではないがリスクが少なく一番美しく一番安上がりで必要十分な修理だと判断した。